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オナモミ亭 ~猫柳一番地~

くも膜下から回復中の父のことを綴る場。

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手術直前

あっちフラフラ、こっちフラフラのいい加減なエントリーで申し訳ありません。
今日は≪家族がいつも傍にいる~祖母の教え≫の続き
父が倒れ、わたしが救急病院に到着してからのことを。

当時書いたことを今読むと、自分で相当笑えます。
リアルタイムでアップしていたら「この人阿呆じゃなかろうか」と思われても仕方ないふう。 ぷ。
気分は「かかってこい!怪人くも膜下!」なロンリーライダー。 異常に冷静で、異常に熱い。 ぶほほ。




2009年10月30日、夜

病院への到着は、わたしが最後となった。
泣き虫気味の母が泣いてはおらず、姉家族四人・弟……
がらんとしたロビーに揃って弁当をつついているどの顔にも、ほんのり笑みが浮かんでいた。
それを見て、わたしは激しい希望を持った。 「父は、こっちに帰ってきてくれる」と。
今一瞬より、後ろ向きな言葉は、一切口にすまい。 思うまい。
真打カツオの第一声は、みんなの肩の力を抜くものがよいだろうと思った。
「みんなよく集まれたよねぇ。 よかったなぁ。 こんな事態で久々の全員集合はちょっと切ないけどね。
でも、きっとうまくいくよ。 これはいい兆しだぜ。 腹減った~。」 みんな、笑った。


わたしはトンカツは嫌いなのだが、義兄がトンカツ弁当を買ってきてくれたその気持ちは、よくわかった。
義兄は洒落の利いた人で、げんを担ぐのが好きなのだ。 勝つぞ、ですか。 いいね。
今夜は長丁場になる。 今夜だけではすまないかもしれない。 腹ごしらえとは気が利いている。
腹が減っては戦はできぬ。 これは戦だ。 決死の戦の始まりだ。
怪人くも膜下 VS イソノ家。 必ず、怪人くも膜下に、勝ってやる!


家族は1人ずつ、短時間ではあるが父との面会を済ませていた。「意識のあるうちにどうぞ」と。
脳内ではまだ出血が続いている。 興奮させてはいけないので、1人ずつだった、と。
タッチの差で本格的な準備に入ってしまい、どの先生が執刀するか決めているようだ……とのこと。
意識のあるうちに? そうだ、油断は禁物。 この言葉も、胸に刻み込んでおこう。
さっきまでいてくださったという町の職員さんから聞いた
父がどのように倒れ、どのようにこちらにたどり着いたのかの全てを、家族から聞く。
50代の女性職員さんは、倒れた瞬間にくも膜下だとわかった、とのこと。
冷静で迅速な行動が父を……先輩方の亡くなった状況を思い起こす。 なんとラッキーだったことか。


わたしは広告業界に長く身を置いている。
無茶をするタイプのわたしは、先輩方によく言われた。 「校了前に自分が校了になるなよ」と。
不規則な生活の中、接待もしなければならず、疲れた体で徹夜が続く業界だ。
女のわたしでも年間労働時間は5000時間を越え、それもまた愉しいという謎な業界なのだが
当然、健康でい続けるのは難しいわけで、それでも尚、仕事を愛してしまう自分自身と戦いながら
幾人もの先輩が、机で、外回り先で、移動の新幹線の中で……くも膜下でかえらぬ人となっていた。


「ラッキーはラッキーを呼ぶぞぉ! このラッキーは続くぞぉ! お父さんはタダモンじゃないしな」
わたしが狂喜すると、みんなも笑った。 前向きな気持ちが前に道を開くのだ。 掛け声と笑顔は重要だ。
油断は禁物なのを忘れてはいけないが、嬉しい気持ちをパワーに変えるためにも。
多少は覚悟のあったわたしたちはともかく「祖父ちゃん大好き」な甥と姪は、相当辛い筈。


看護士さんが降りてきて「また面会ができますので、お済みでない方はどうぞ」と告げた。
おしどり夫婦の片割れの母。 さぞかしもう一度会いたいだろう。 わたしは母の顔を見た。
母は「脳に負荷をかけちゃいけないから、1人で行っておいで」と言った。
父のいるICUに行くには、ナースセンターの前を通る。
続々と到着する年配の看護士さんたちが執刀医について話しているのが聞こえた。
「●●先生が一番経験があるのに」「●●先生は夜勤明けでお疲れだから駄目よ」
凄い。 先生も人なり。 いろいろなことをプロが考え、準備は進んでいるのだ。
安心してお任せしよう。 ここに運ばれたのは、ベストでありマストだ。


ICUにいる父に「お父さん」と声をかけると、「おう」といつものように片手を挙げる笑顔があった。
「ふふふ。 なっちまったもんは仕方ないナァ」
「ふふふじゃないよ~。 こっちの心臓が止まっちまうかと思ったよ。 でも、顔見て、安心したよ。」
「ははは。 みんな揃ったかぁ。 じゃあそろそろ帰れるな♪」
「何言ってんだよ~。 これから手術するんだョ。 まだ頭の中で、血が出てるんだって。」
「え? そうなのか? そりゃ不味いなァ。 明日の野菜市、僕しかわからないことがいっぱいあるんだよ。
 手術、明後日にするわけにはいかないかな」
「いかないダロ」
「そおかァ? 聞いてきてくれよ。」
「聞かないでもわかるョ。 叱られるョ。」
「じゃあ今から言うから、メモって、手配してくれよ。 みんな困っちまうから。
 さっきからお母さんもサザエモドキも『そんなことは、いいの!』って(笑) よかないからさ。」
「うん、わかった、任せて。」
笑顔で会話は続いた。 父を不安にさせては、いけない。 父の居場所も、守らなければ。


野菜市とは、地域振興と地産地消の推進のために父たちが始めた町おこしイベントで
昨今流行の『道の駅』のようなことを、月に一度行うものだ。
ニューファミリーも昔ながらの住民も愉しみにしており、1時間で完売することもしょっちゅうだ。
今のご時勢、中年層はやすやすと会社を休むわけにはいかないので
父のようなご隠居さんや、地付きさんの二代目さんを中心に行う……はずだったのだが
商店主が無料宣伝の場として使い始めてしまい、静かな町の騒動の元にもなっている。
「私利私欲の場にしてはイカン!」と雷を落とし、本来の趣旨に沿ってプロデュースするのが父の役目。
ご隠居中のご隠居☆由緒?正しきご意見番である父は、あちこちからのご指名があとを絶たないのだが
いろいろやっている役の中でも、本人も一番愉しみにしていたのが明日の野菜市なのだった。
私利私欲を阻止するために、当日まであえてオープンにしないこと・決めないこと……色々。
そんな匙加減も「ナミヘイさんならでは」で、町内会で重宝されまくってきた所以なのだが
急に倒れるとは、どこのどなたも、本人も家族も、露とも思っていなかったのだった。


「引継ぎ」を終えると、父はとても安心したようで、またよい笑顔を見せてくれた。
「宜しく頼むよ。 それにしても、やっぱりちょっと頭が痛いかもしれないなァ。」
「ちょっとじゃないと思うよ。 我慢しちゃあ駄目だよ。 先生たちにはほんとのこと言ってね。
 それとね、いっぱい話すと、また血が出ちゃうかもしれないんだって。
 あとでまたゆっくり話せるから、目ェ瞑って安静にしててね。」
「めんどくせぇなぁ。 大袈裟なんだよ。 じゃあ後でなァ。」


笑顔で握手。 そして、手を振った。
これが「いつものナミヘイ節」の当面の最期になるとは、この時わたしは、思ってもいなかった。



長い。 長すぎる。 スミマセン(笑)
インフォームドコンセントと術後の父の様子について、また今度公開させてください。

「お父さんが元気になったら、一緒に作ろうね」
11月1日。 病院に行く前に。 父が箒を作るのを愉しみにしていた箒草を仕舞う。


父の闘病とわたしの考察……リアルタイムで公開しなかったものがたくさんりますが
文章としてはまぁまぁまとまっているのに公開しなかった理由は、恐ろしい長文だったことがひとつ。
おいでになった方が読みやすいかどうか考える時間はありませんでした。 ははは。


「言葉に、自分の行動が引っ張られることを恐れた」の方が、大きかったかな。
我が一族は考察やディベートが大好きでして。 論を論ずるのが愉しみなんですね。
ちゃぶ台を囲んで、どうでもいいことから世界情勢まで、あーでもないこーでもない⇒わはは です。
おかしな家族で御座います。 でも、タダで愉しめて、なかなか愉しい遊びなんですョ。
だがしかし。 時はイソノ家☆一大事中の一大事中、緊急事態中、緊急警報発令中。
論に酔ってはいないかを検証する時間も、ちぃっとばかり足りませんでした。


ただ、たらればがナイのと同様、人間、追い込まれれば追い込まれるほど本質が出るものです。
我らアタマデッカチ一族、時間のない時ほどにとことん検証&シュミレーション。
(おお、サザエさんの登場人物の頭が大きいのはそのためか♪)(違うか~)
咄嗟の判断のようでいて、咄嗟に行動しているようでいて
いつも頭の中ではいろんなことをガチャガチャと考え、パズルのピースを組み合わせています。
父が救急病院にいた時は、時間が足りない分は、一家全員集合! の、数を頼みに物事を決めました。
寄らば文殊の知恵。 ぬほ。 結果、書き溜めていたことと同じ結論を得ておりますネ。


普段からいっぱい話をすることは、とっても大切だと実感しました。 話しててよかったと思いました。
ギリギリいっぱいの時、不用意な言葉は、心に突き刺さりやすいものです。
無用に疲れを増やしてる場合じゃないですもんネ。
普段から適切な言葉を選んで使う習慣、これは、父がとても大事にしていたことでもありました。


急がば回れ、ですかネ。 考えることは、どんな時にでも必要だ。
あとで、心から納得するためにも。 ウン。


●父が倒れた日のこと●
[・ω・)ノ→TOP]

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≪HN≫
onamomi*
猫5匹・亀2匹・夫のヒトシ(仮名)と東京の空の下で生息中。絶滅危惧職種のアド編集のへっぽこ妻。本業は孝行娘( ´艸`)

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●別館的本館●おじゃもみ亭●

くも膜下から復活中の父ナミヘイの介護が生活の軸の今日この頃。あれができるようになった~こんな表情が戻ってきた~と、毎日バシバシ写真を撮る…ついでに、オカシナ写真を、こちらに。

         

HNのオナモミは、子どもの頃から好きなもののひとつ。投げて、くっつけて遊ぶ、愉しいあのイガイガ。だがしかし。名乗ってから知る☆花言葉。≪怠け・頑固・粗暴≫…ヒドイヮ!ぶほー!

◆登場人物1:わたしの家族◆
リアルサザエさん一家でゴザイマス。
男性はナミヘイ頭で「バカモン」と威張るのが得意。女性はみんな財布を忘れて本人だけが愉快じゃないタイプ~。
・わたし…オナモミ(カツオ☆ポジ)
・夫…ヒトシ
・わたしの父…ナミヘイ
・わたしの母…フネモドキ
・わたしの姉…サザエモドキ(隊長)
・わたしの弟…タラオ
・姉の旦那さま…マスオ兄さん
・姉の息子(甥)…タラオ2号
・姉の娘(姪)…ワカメ
・ピスたちお…うちの五匹の猫
 ピ…ピッ君(ぴ助:オス)
 ス…スミちゃん(寿実太:オス)
 た…たーまん(本名:メス)
 ち…ちっ君(ちぃ作:オス)
 お…おちゃびん(ライオっさん:オス)
・銭がめーズ
 ゼニオ君&デコたん

◆登場人物2:ヒトシの実家の人々◆
夫のヒトシは、植木等さんの暢気なサラリーマンと寅さんの中間みたいなヤツで…ぶほほ。婚家はまさに≪寅屋の面々≫…ぶほほ。うーんと面白いことダケ、たまに。
・夫の父…ヒトシずパパ
・夫の母…ヒトシずママ
・夫の妹…サクラさん
・妹の旦那さん…ヒロシさん
・妹夫婦の双子の息子…ミツオーず

         

◆わたしの本棚でご紹介した本たち

母が長いこと子ども向けの図書活動をしておりました。新しいものが届く度に夢中で読んだ、愛しい愛しい本たち。何度も何度も読み、大人になってから買い求めたもの・いただいたものなどを、思い出話の中で少しずつご紹介しています。いろいろな訳者や版で出ている本は「この版がイチオシ!」とわたしが愛したものをチョイス。雰囲気が微妙に、そして絶妙に違うのです。是非、まずは図書館で借りてみてくださいな。
シアワセな時間を、お約束します。

         



         

◆お世話さまです(*v.v)。template◆
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≪CriCriさん≫
オナモミ、浮気をしない人( ´艸`) 時々CriCriさんの別作品でお着替え。アレンジしやすい素敵な仕様で、カスタマイズも愉しいのです( ´艸`)

◆お世話さまです(*v.v)。illustration◆
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≪もずねこさん≫
絵本のような優しい温もりとタッチにクラクラ☆どこか不条理な空気感もたまりません。カスタマイズに記事中に…モリモリ拝借中( ´艸`)
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≪バーナンの白黒さん≫
味のあるドコニモナイ絵。キリッと書けた時しか使いたくない素敵味。素材も素敵ですが、その他のページもとっても和めます。特に、蛇さんマークのところがとってもお気に入り( ´艸`)
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≪埼玉雲丹屋図案社さん≫
ほのぼのなのにインパクト大!吃驚なバランス感覚がたまらない。いつもいい出汁、出ています。
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≪アーキミックスさん≫
組合せを考えるだけで愉しくなれる多彩な素材、豊富なバリエーション。みィんな素敵にアーキミックス風味。
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≪ふわふわ。りさん≫
ご存知、優しいタッチで大人気の老舗。背景拝借中♪
blogramこっそり会員( ´艸`)
忍者は静かなイイトコロ。そこがとってもスキナトコロ。だけど時々静かすぎるような気がして、こっそり参加。こっそり☆ず☆みーん、ランキングとかどうでもイイってこと( ´艸`) 自分がよく使う言葉が分析されて、オモシロイデス。

◆respect
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でっきるっかな、でっきるっかな
はてはてほほー、はてふふー♪
よくワカリマセンが…
わたしは1.0が好き(そういう問題?)
わたしは見たことがないのです          携帯電話はもっぱら通話受信な生活
携帯で見ることを…全く…想定してなかったり…します…ゴメンナサ~~~イ( ´艸`)
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(2008.6.21~)
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